産業廃棄物業務とは
産業廃棄物とは事業活動から出るゴミのうち、一般廃棄物に当たらないものを言いますが、処理のための簡単なフローとしては下記のようになっています。
このうち、排出された現場から一度ゴミを小さくしたり無害化したりする中間処理を施し、更に埋め立てや海洋投棄といった最終処分をするのですが、それぞれ収集運搬業、中間処理業、最終処分業の許可が必要になります。
また、一般の家庭や事業活動から出るものの産業廃棄物に当たらないものは一般廃棄物と言われますが、それについても同じようなフローになり、許可がそれぞれ必要になります。
我々が生きていれば生活ゴミだけでなく事業活動からも様々なゴミが出ますが、それを処理して清潔な環境が保たれているのは、こうした静脈産業と言われる廃棄物業界のおかげなのです。
産業廃棄物業務に取り組むメリット
廃棄物業界自体で見れば人口減少によってゴミが減ることを考えると市場縮小はしていくと考えられています。
それでも産業廃棄物業務の市場性は圧倒的に大きいと言えます。なぜでしょう?
そもそも産業廃棄物業務と一言で言っても、収集運搬業、積替え保管、中間処理、最終処分、優良事業者認定、公益認定、再生事業者登録、施設設置許可など本当に幅広い業務があります。
そして収集運搬業とはその名の通り、廃棄物を発生場所から処分場まで運ぶための許可ですが、廃棄物の発生する自治体と持って行き先の処分場がある自治体、それぞれ全ての許可が必要になります。
たとえば47都道府県すべての建設現場から出た廃棄物を運ぶ場合には、47都道府県すべての許可が必要なのです。
これは他の許可の多くが知事許可と大臣許可しかないことを考えると圧倒的に市場が大きいと言えるでしょう。
もちろん47都道府県で許可を持っている場合に、役員が変われば47全ての変更届が必要になりますので、こうして掛け算が発生する業務というのは非常に魅力的です。
収集運搬業や中間処理業などは基本的に5年の更新、優良事業者認定をとっていると7年ごとの更新になります。
しかし、車の入れ替えだったり、役員変更だったりで変更の手続きが発生することは良くありますし、設備の入れ替えなども定期的にあるということを考えると、更新のサイクルが長い割に継続性は高い許認可であると言えます。
また、最初は収集運搬で1県のみという場合でも事業拡大に伴って他の県で許可をとったり、一時積み替え保管するための積み替え保管の手続きや作業所や工場の許可、一定量以上を処理する際に必要な施設設置許可、また建物を建てるような場合には建築基準法上の許可も必要になるなど、非常に多岐にわたる関連手続きがあります。
他にも建設業と一緒に産廃業を営む方もいますし、古物商などとも相性がいい業務ですので関連性のある許認可が多いことも魅力です。お客様から他の許認可手続きをご依頼いただける可能性が高い、つまりアップセル、クロスセルが発生しやすいのは大きなメリットと言えるでしょう。
産業廃棄物業務のメリットとしては単価の高さも見逃せません。これには2パターンあります。
1つ目が掛け算が起こるという点。先ほどご紹介したように、産業廃棄物収集運搬業の場合には廃棄物が排出される都道府県ごとの許可が必要になります。営業エリアが広ければ広いだけ申請する件数が多くなるわけです。
例えば1申請6万円の報酬だったとしても、40箇所の申請があれば240万であり、こうした掛け算が起こりやすいのが産廃業務です。そして更新の際にはまた同じだけの申請が必要になりますので、更新のサイクルは長いものの、長い目で見ると徐々に件数が積み上がっていく業務であるといえます。
2つ目のパターンとして挙げられるのが業務そのものの単価が高いというものです。
例えば中間処理業を受任したら最低でも100万円は超えるでしょうし、入れる設備によっては数百万単位の請求になることも珍しくはありません。
単体の単価としてこのレベルである手続きはそう多くはないでしょう。
産業廃棄物に関する法律は非常に数が多く、そしてそれぞれ改正が頻繁にあります。
改正によって運用がどう変わるかは事業者にとっては非常に重要な関心事であり、行政と事業者の間に入れる行政書士に期待される役割とも言えます。
また、コンサルティングができる=顧問契約が可能になりますので、行政書士の永遠の課題である継続収入という視点から見ても魅力的であると言えます。
僕は環境系行政書士になる!と、この道を歩み続けているわけですが、10年以上経っても続けていられるのはこの業務にやりがいを感じているからです。
事業活動では廃棄物は出ます。生きているだけでゴミは増えていきます。
最近は海洋プラスチックなども問題になっていますが、その社会問題に取り組んでいるのが廃棄物業界であり、我々行政書士は適正処理、リサイクルのお手伝いをすることで地球環境に貢献できると思っています。
産業廃棄物業務のデメリット
ここまで沢山メリットを紹介してきましたが、デメリットがないわけではありません。
その1つとして移動が多いということが挙げられると思います。
収集運搬業でいろいろな県に申請できるのはメリットとは書きましたが、申請は窓口に行く必要があるところがほとんどですので、その分の移動時間はもったいないと言えるでしょう。
また、中間処理業でいえば都市部には基本的に処分場はつくれないので、そもそも移動が必要になりますし、車でないといけないようなところがほとんどです。
移動もコストとして捉え、細かなことですがしっかり請求していかないと、忙しいけど利益はそれほどでもないということになりかねません。
ただ、現地に毎回行くわけでもありませんし、それを加味してもなお収益性は高い業務であるといえます。移動時間を有効に活用する、移動を最小限にできるよう計画を立てる、など少しの工夫でデメリットは小さくできると思います。
別のデメリットとして考えられるのは、やはり「グレーなイメージ」ではないでしょうか。
なんとなく怖そうとか危険そうといったイメージはやはりつきものですし、実際に歴史的に見ると反社会的勢力の関与がまったくなかったとは言えません。
ですが、普通に業務をやっていてそれらを感じることはまずありません。僕のように業界にどっぷり浸かっていても出くわさないわけですから、まず大丈夫と思って良いでしょう。
産業廃棄物業務のこれから
社会全体で見れば廃棄物自体の量は減っていくでしょうし、リサイクル技術は更に高まり業界はどんどん変革されていくと思います。
したがって、単に許認可手続きだけにフォーカスして考えると、許可業者自体の減少に伴って手続きも減っていくと考えられます。
しかし、その分変化に対応していけるようなコンサルティング領域へのニーズは高まり、相対的に行政書士にとってはチャンスにもなり得るでしょう。
それにこの分野はまだまだブルーオーシャンであり、本格的に対応している行政書士が少ないので、これから開業する行政書士事務所にとっても十分に参入の余地があります。
これからの社会、日本の未来を支えるべく、産業廃棄物業界の活性化に貢献できる行政書士が増えるのを期待しています!