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行政書士と相性がいい!ダブル・トリプルライセンスについて詳しく解説

行政書士試験に合格したけど、なかなか開業に踏み切れない・・・もっと他の人と差別化できる強みを身につけたい・・・そんなときにふとよぎるのがダブルライセンス、トリプルライセンスという選択。本記事では、行政書士との相性が良いダブル・トリプルライセンスにおすすめな資格と、その取得によって得られるメリットについてご紹介します。

ダブル・トリプルライセンスのメリット

幅広い業務に対応できる

いわずもがなですが、資格が増えること=知識が増えることですので、対応できる業務領域は掛け算の要領で増えます。行政書士の業務範囲は以下の記事でも紹介した通りですが、対応業務の範囲自体はとても広く、その中に対応出来ない業務、つまり他の法律で制限されている他士業等の独占業務が含まれています。

例えるなら穴の開いたチーズのようなもので、チーズ全体が行政書士の業務範囲、穴の開いた部分が他士業の業務範囲と捉えていただけると良いかと思います。

資格を増やすということは、そのチーズの穴をひとつ、ふたつと塞げるということなんですね。

独自のサービス展開が可能

複数ライセンスは単に業務範囲を拡げるだけでなく、独自のサービスを展開することができるようになります。例えば建設業に特化した開業を考えている場合、行政書士資格のみであれば業務は建設業許可や経審、入札くらいに留まりますが、ここに社会保険労務士の資格をプラスすると労災関係など労務面でもサポートが出来るようになり、顧問契約を増やしやすいといったメリットがあります。

クライアント目線で考えても、わざわざ手続きによって依頼先を変える必要がないので楽ですし、十分に「選ばれる理由」になるのではないかと思います。

ダブル・トリプルライセンスにおすすめの資格

さて、では実際にどのような資格があると役に立つのでしょうか?行政書士×〇〇としてよくあるパターンをいくつかご紹介していきたいと思います。

宅地建物取引士

民法の学習が重複するので受験のハードルを低く感じることがメリットの宅建士。宅建士の資格があると不動産取引が出来るようになるので、例えば不動産取引+飲食店の営業許可のように店舗の契約から開業までワンストップで、というような関わり方ができます。

ただ、筆者の感覚としては行政書士→宅建士というよりは宅建士→行政書士という順番で取得している方の方が多いようなイメージもあります。資格の難易度としては行政書士よりも低めのようで、合格率も15~18%とやや高めの傾向です。試験は年1回の10月実施で、行政書士試験の合格発表が1月末ですので、合格後に受験を決めても8~9か月程度余裕を持って受験に挑むことができます。

土地家屋調査士

こちらも宅建士と同様に民法の学習範囲が重複します。

農地転用や開発許可など不動産系の許認可と相性が良く、測量や表示に関する登記までワンストップで受任できるようになります。それから相続業務においても土地家屋調査士のスキルが活かされる場面は多いでしょうから、特に地方で相続業務をやろうと考えていらっしゃる方にはあると嬉しい資格かもしれません。

資格の難易度としては行政書士と同等またはそれ以上で、合格率は8~9%とやや低めとなっています。法知識だけでなく計算や作図がある試験なので、苦手意識のある方にはそこがちょっと辛いようです。

社会保険労務士

科目や学習範囲は重複しませんが、行政書士とのダブルライセンスとしてよく検討されるのが社労士です。宅建士は宅建士→行政書士、のパターンが多かったのに比べると社労士の場合は行政書士→社労士のパターンが多いように思います(社労士の受験には大卒資格もしくは行政書士などの国家資格が要るので、その兼ね合いかもしれませんが)。

行政書士として開業したあとも、「やっぱり社労士あった方が良いかも」ということで受験勉強を始める方も多いです。特に介護・障害福祉といった分野とは相性が良いのでそちら方面での開業を考えている方は検討してみると良いかもしれません。

難易度は行政書士試験よりも高いと言われており、必要な勉強量は1000時間程度が目安だそう。試験が毎年8月なので行政書士試験合格翌年の受験を見据えてまずは学習をスタートすると良いかもしれません。

簿記

国家資格ではありませんが、やはり定番の簿記も役立つ資格です。許認可業務を扱う場合であれば、大体どんな許認可でも「人・モノ・金」という要件がついて回りますのでクライアントの財務諸表を目にする機会は多くあると思います。また補助金や融資など資金調達の支援を行う場合にも、やはり財務の知識は欠かせません。

さらに、開業当初は個人事業主として自分で会計ソフトの入力を行ったり、確定申告を行ったりということもあるでしょうからとりあえず日商簿記の3級くらいは持っておいて損はないのかなと思います。ちなみに3級であれば100時間程度の勉強量で充分ですし、ネット試験もあるのでいつでも気軽にチャレンジ可能です。

補足ですが建設業関係は独自の会計処理があるため「建設業経理士」という建設業に特化した経理の資格があります。もし建設業をメインに考えている場合は、そちらも検討してみてください。

番外編:自分の学びたい資格

行政書士×〇〇という独自のカラーを出したい場合、2つ目・3つ目として選ぶ資格はこれまで挙げたような「知識が役に立つ資格」である必要はありません。

例えば酒類販売業免許を扱いたいなら行政書士×ソムリエ、相続業務を扱いたいなら行政書士×心理カウンセラーのように、自分がやりたい仕事・興味のあることに関連した資格を選ぶイメージです。

折角勉強するなら楽しく勉強したいですし、何よりも取扱業務に関連した+αの資格はクライアントとの会話のきっかけになったりするので営業面でも役に立つことがあります。

ちなみに筆者は動物が好きという理由で動物法務を取り扱っていますが、愛玩動物飼養管理士という資格をプラスで取得しました。本来であれば動物病院で勤務したり、トリミングサロン、ペットホテル等を営む方向けの資格ですが、思いがけず法知識も試験範囲に含まれていたりして、いい勉強になりました。

複数資格は本当に役立つ?

要るか要らないかで言うと

よく行政書士試験の合格者の方から「ダブルライセンスは必要ですか?」という質問を受けますが、結論から申し上げますとダブル・トリプルライセンスといった複数資格は必ずしも必要ではありません。(ここまで色々おすすめしておいて結局要らんのかい、という感じですが)

行政書士資格のみで仕事を取っていくことは全く難しいことではありませんし、むしろ現在活躍している行政書士の皆さんは行政書士資格1本という方の方が圧倒的に多いはずです。

それでもチャレンジする意義はある

ただ、複数資格があるとそれだけできることが増え、可能性が広がることは間違いありません。時間は有限ですのでむやみやたらに資格取得にチャレンジすることはおすすめできませんが、自分がどういう業務展開をしたいのかまずはビジョンを描いてみて、そこにプラスであれば良いなという資格にチャレンジすることには意義があると思います。

より自身の専門性を高めるため、皆さんが良い選択ができるよう応援しています!